そうか、グスタフは煙草なんだ。
漠然とそう思った。







--------------------------------







グスタフはいつも煙草を吸っている。
そして俺はいつも気になって聞く。


「それ、美味いのか?」



グスタフは、何度聞いても同じ答えしか出さない。



「……美味くはないな。」


ならどうして吸っているんだと聞いても、
吸いたいから、とか、習慣になっているから、とか
結局よく解らない答えしか出さない。
美味くはない、でも吸う。
一体どういうことなんだろうか。




『謎はいつまでも謎のままであってはならない。』
たった今作った俺の持論だ。


グスタフは丁度買出しに出ていることだし、
少しくらい良いだろう。









-----------------------------









さんざん探した結果、食器棚の奥に新しい煙草が数箱。
なんでこんな所に隠してるんだ…。

いつもの答えの後にグスタフは必ず俺に釘を刺す。


「お前は吸うなよ。バリー。」


するな、と言われればしたくなるのが常だ。

それにしても、
気になることは放っておけない、
するなと言われればしたくなる。
グスタフはそんなのとうの昔に解っている事だろうに。


ああ、…だから食器棚の奥なのか。
納得して、何だか少し情けないような気もしたが、
見つけてしまったものを、見なかったフリが出来るはずがない。
とりあえず、暖炉に火をつけるときに使うマッチをとって来よう。

ライターが有ればそれにこした事は無いが。








-----------------------------









煙草に火をつける。
立ち昇る紫煙はいつもと同じ様に空気に消えていく。


グスタフは、どうして煙草を吸うのだろう。
何が良いのだろう。





そう思いながら口をつけた。





「………!!げほ!げほっ!!」




……不味い。とにかく。
あ…でも何となく頭が冴える感じがする。か?


だがこれ以上吸う気にはなれない。
灰皿で煙草の火を消して、水で口を濯いだ。

益々解らない。
頭が冴える気がするのが良いのだろうか。
それ以外に煙草の利点は無さそうだ。










---------------------------







それにしてもグスタフは遅い。
買い出しに何時間かかるんだ。

まあ、さっきまでは、そのほうが都合が良かったのだが。

いつもより早めに帰ってきて、俺が煙草を吸っている所なんて見つかったら、
また説教喰らうに決まってる。






……それにしても遅い。何やってんだ。








そう思ったら、玄関の方でグスタフの声がした。
開けろとか何とか言っているようだが、鍵を閉めた覚えはない。
そう思って扉を開けると、
妙に沢山袋を持ったグスタフが立っていた。
どうしたんだと聞いてみれば、


「つい買いすぎた。」


だそうだ。
グスタフはさっさと家の中に入ると、
台所のテーブルに袋を置いて、思いついたように言った。




「そうだ。バリー、ちょっと来い。」



「何だよ?」



手招きされるまま行ってみる。
晩飯の話か、その辺りだろう。









---------------------------













いきなりグスタフが俺の手を引いて、口付けた。



「………!?」



いつもながら、グスタフは唐突だ。
軽く振り払って怒鳴ってやる。


「な、何だ、急に!?」



「………バリー、ワシの煙草を吸ったな?」



気持ち良いほどにあっさりばれた。
煙草を吸った後、口は濯いだ。
どうしてばれる?



「大した換気もせずに居ればすぐ解る。
それに、口を濯いだくらいで気付かれんと思ったら大間違いだぞ。」




またしても完敗。

ワイン、
木炭、
その他、色んなものを食ったり飲んだりした後に、
俺は証拠隠滅したつもりでも
グスタフはいつもすぐに見破る。

きっとグスタフの正体は人の皮を被った鬼に違いない。と思った。




「それで?」


グスタフの一言で、背中の辺りがひやりとする。
何が、「それで?」なのか。



「煙草はどうだった。」



どうと言われても、感想はひとつしかない。



「…不味かった。」

本当に。




「そうか。」




グスタフは、何故か少し嬉しそうだった。



「なあ、何でグスタフはあんな不味いもん吸ってんだよ。」



いつもの問いは少し変わった。
とことん不味い。
それなのに吸う。
益々解らない。








「吸い出すと癖になるからだ。
煙草は簡単に言えば、程度の軽い麻薬と言ったところか。」



煙草=程度の軽い麻薬の等式。
よく解らないが、体には悪そうだ。



「依存性も害も十分すぎるほどある。
刹那の快味のために将来を壊すような事はするなよ、バリー。」



「もう煙草は吸わねえ。」


勿論それは、不味いから。という理由だけで、だが。








----------------------------
















グスタフが決めた就寝時間より遥かに遅い時間、
俺は自分のベッドに潜った。


グスタフは相変わらず唐突だった。
最初の頃は唐突過ぎてついて行けない気もしたが、
最近は慣れている自分がいる。
少しだけ自己嫌悪。


情事の後の気怠さを引きずりながら、
目を瞑った。















グスタフは煙草だ。
そう思う。






煙たい。
でも離れられなくて、
依存性があって、
害がある。






何となく、煙草を吸うグスタフの気持ちが解ったような気がした。




















end
---------------------------------------------
ええと…やっぱりと言うか何と言うか、
濡れ場(爆笑)は端折りました。
期待をしてはいけません(エエ
何故かバリたんの中で煙草=グス氏の等式ができました(笑
バリたん、グス氏に依存してるんですか!
と自分で突っ込みましたが、潜在意識の内で、
きっといつの間にか依存してるんですよ…。
そういう事にしてやって下さい。ね。(何
でもバリたん自分で考えときながら、依存してるって事に
気付いてないんじゃないかなあとか思ってみます。
バリたん今疲れて眠いから!(エエ)半分寝てますから!

因みに私は煙草を吸った事は御座いませんよ!(何
煙草は嫌いです…。描くのは好きですが。
冒頭のバリたんとグス氏のやり取り
(煙草をどうして吸うのか聞いている辺り)
は私と父のやり取りですが。笑。

2005/04/05