河野 進(1904〜1990)満州教育専門学校をを経て、神戸中央神学校で学び玉島教会において牧師となる。
 その時賀川豊彦より、岡山ハンセン病療養所での慰問伝道をすすめられる。以来五十有余年の間たずさわる。

読む者の心を暖かく優しく包んでくれる河野進の信仰の世界です。
     みじめ

あの人は

まだお礼を言わない

忘れたのとちがうか

ふと思った瞬間

きたないみじめな自分にあきれた



      病む

病まなければ

聞き得ない慰めのみ言葉があり

捧げ得ない真実な祈りがあり

感謝し得ない一杯の水があり

見得ない奉仕の天使があり

信じ得ない愛の奇跡があり

下り得ない謙遜の谷があり

登り得ない希望の山頂がある
        上と下

太陽の光は天上から下界をくまなく

雨は雲の上から大地深くしみ通り

川は山の上から大海まで立ちどまらず

木の根は土地から岩盤を突き破っても

筆は上から下へ幾百旅でも繰り返し

涙は目から下へ必ずこぼれ落ち

食物は口から下ならどこまでも

人間だけは無駄に戦い死んでも上に登ろうと
     一言

一言 足りなかった

悔いは幾度かある

だが いつかわかってもらえた

一言 多すぎた

悔いは幾度もある

だが あっさり忘れてくれても

わたしの心にとげはのこる
        手足

よくしゃべる人は 手足が動かず

口べたの人は 手足が軽い

りくつをを言う人は 手足が冷たく

だまっている人は 手足が温かい

富んでいる人は 施したがらず

貧しい人は ないものまでやりたがる


よくもまあ

神さまは公平におつくりなさる

    はっきり

キリスト教はきらいですが

あなたは好きです

はっきり言われて

うれしいような

つらいような

そして

やっぱり偽善者だな

うなだれたり


  むだ

なんと無駄な

思い煩いで

おしゃべりで

さわぎで

争いで

悲しみで

ふたたび来ない今日を

いっぱい満たした 惜しいな


   口ぐせ

きみ

天国を知ってるかね

知りません

人をほめるところだ

地獄を知ってるかね

知りません

人の悪口をいうところだ

賀川豊彦のくちぐせであった


         谷

主イエスさま 谷をさらに下りねばなりませぬか

お返事はきこえませぬ

では もっと下ります

どちらを向いてももう下りられませぬ

ここならよろしいでしょうか

主はきびしくおこたえなさいます

謙遜には谷底はありませぬ

わたしの十字架に会うまで下りてきなさい
      心

ハンセン氏療養所で

手のない信徒がていねいに

おにぎり献金を下さいました

わたしははっとしました

両手が完全なのに

なにをささげたでしょう

神さま この人たちに