1.正常眼圧緑内障の現状
3.視神経乳頭の萎縮と視野欠損
 
正常眼圧緑内障では、ほかの緑内障と同じく目の奥にある視神経乳頭部〔図5〕のところで視神経が障害を受け、そのため目で見た像が脳に伝わらなくなって視野障害を起こします。したがって、眼底検査をすると、視神経乳頭部が萎縮してしまってくぼんで白くなっているのがわかります。
〔図5〕 目の構造(水平断面図) 〔図6〕 眼底検査で見られる 正常の視神経乳頭
 
〔図7〕 正常眼圧緑内障の眼底所見1
(視神経が白くなり萎縮している)
〔図8〕 図7の症例の視野検査結果
〔図7〕の例では視神経乳頭の下方に萎縮が強いため、下方網膜からの視覚信号が脳に届かず、〔図8〕のように上方の視野が欠けることになります。これは現在、眼科で最も一般的に使われている視野検査の結果で、見えない部分が黒く表示されます。
 
〔図9〕 正常眼圧緑内障の眼底所見2
(上方に強い萎縮がある)
〔図10〕 図9の症例の視野検索結果
同様に〔図9〕の例では視神経乳頭の上方に強い萎縮があり、また下方にも萎縮がありますが、それに対応して〔図10〕のような視野欠損が見られます。
 
〔図11〕 正常眼圧緑内障の眼底所見3
(かなり進行した例)
〔図12〕 図11の症例の視野検索結果
〔図11〕では非常に強い視神経乳頭の萎縮に加えて、下方網膜の広い範囲と上方の血管に沿った部分に周りより暗くなっている部分がはっきりわかります。これは網膜神経線維欠損と呼ばれるもので、萎縮した視神経線維が抜けてしまうために、その部分の神経線維が消失し、網膜からの反射が低下するものです。これも正常眼圧緑内障を診断するうえで非常に重要な所見です。この症例では〔図12〕のように、非常に強い視野欠損を認めますが、これだけ悪化していても視力は影響されないため、本人が気がついていないケースが大半です。