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貫入 (かんにゅう) / 陶磁器用語当窯の陶器は、釉薬の種類により貫入が入るものがあります。 貫入は釉と素地の収縮率の差により、焼成後の冷却時に生じた釉のヒビのことでキズではありません。通常の陶器は、素地の上に釉薬を施釉してから1200度から1300度という高温で焼かれます(釉薬の種類により違う)。その際釉薬は溶けてガラスのような層(Sio2)となって陶器の上を覆います。焼かれた後は次第に冷えていくわけですが、その時の収縮度が陶器本体の素地と釉薬とで違うのです。この差が大きいと(10%以上と言われています)釉薬がひびのような状態になって固まります。これが貫入です。 これ以上の収縮率がある場合、釉薬が生地から剥がれたりします。それは陶器としては使えません。ほどほどが大切です。 貫入は、磁器にも陶器にも入っています。磁器は釉薬が薄くてほとんど目には見えないだけなのです。貫入は透明釉が厚くかかったやきものにはっきりわかるように出てきます。亀甲貫入釉は、釉薬を2.3度厚掛けし貫入そのものを装飾として使っている釉薬です。あたる光線の加減で貫入が亀の甲の文様に見えるところからこのような名前がついたと言われています。 貫入は、熱い窯から作品を取り出す時またはその直後にたくさん入いります。ピンピンという音をたてて入っていく貫入はとても神秘的で美しいものです。ずいぶん前ですがラジオで音の風景?のようなタイトルの番組でえんえんと貫入が入っていく音を聞かせてもらいました。それは偶然聞いたものですが、確かに貫入の音は美しく感動的でした。まるで夏の風鈴のようでした。 ![]() 貫入は普通冷え切るまで数日間は進みます。そしてピンピンという音もしなくなるので、もう貫入が入るのも終わりだなと思われる方も多いかもしれません。ところがです、上下の抹茶茶碗まったく同じ釉薬をかけて焼いているにもかかわらず、下の抹茶茶碗のほうがあきらかに貫入が少ないのです。 ![]() 私の知る限り貫入は窯出し後数日間で入ってしまいそれで終わると思っていました。ところがこの2つの抹茶茶碗を見る限りそうではないようです。上の抹茶茶碗は、下の物より古いものなので数年をかけてゆっくりゆっくり貫入が入っていったことが伺い知れます。 下のほうはまだ新しいので貫入の数が少ないですね。 私は御客様と接する機会が多いので小耳にはさんだことですが、御客様の中には、貫入がヒビで、入っていてはいけないものと思っていらっしゃる方も多いのが現状です。貫入に汚れが入り込んで『ばっちい』『きたない』と言われたことがあります。 とても残念ですが、衛生的によくないと思い込まれている方は貫入のどこが良いのか 御理解いただけないようです。一度使われるとその良さもおわかりいただけると思います。 また貫入が入ったコーヒーカップや湯呑に熱いコーヒーやお茶を入れて飲むと新しく貫入が入って良くないと教えられたことがあると聞いた事があります。陶器は1250度前後で焼かれたものがほとんどです。50度や60度ぐらいまたは100度の熱湯を入れたとしても、膨張が起きて新しい貫入が『人為的に』入ることはありません。貫入が入るときは、あくまで自然に釉薬と生地との収縮率との関係において入っていくものです。熱いコーヒーやお茶を飲むたびに新しい貫入が入るなら、皆さんのコーヒーカップも貫入だらけになってしまいますね。 昔の茶人はこの貫入が入った抹茶茶碗をことのほか好んだそうです。それは時間とともに使い込まれていくわが抹茶茶碗の変化をめでていく心の余裕とでもいいましょうか、我が子を育てるように愛情を注ぎ込んでいくために使うたびに少しづつ茶渋が貫入に入り込みそれが新しい景色となっていきます。抹茶茶碗の中には宇宙があると言われます。茶道または抹茶茶碗の奥深さを知る思いです。
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