歌詞の整合性

ポイントは、南西の追い風を受けてスペインから英国へ帰る場合、本当にドットマンとかプリマス沖のレームヘッドなどを望むことができるのか、という点にあります。「スペインの淑女たち」の3番の歌詞に出てくるドットマンを地図で確認すると、ビスケー湾の北端アッシャントからは相当な距離、恐らく100q以上はありそうなことがわかります。(下の図を参照して下さい。)地図の上からは、この南西の風を受けて帰る場合、最短のルートは、アッシャントから50q〜100q程度離れたビスケー湾北側の海域で針路を北東に取り、そこからイギリス海峡に入り、真っ直ぐワイト島の聖キャセリン岬を目指すのが、道理にかなっているように思えます。
                                              
このルートを辿ったとすると、少なくとも、方向転換をする必要のあるビスケー湾北側の海域からドットマンとかレームヘッドなどを望むことは、あまりにも距離がありすぎるため、不可能だったと思われます。船の位置からせめて40〜50q程度しか離れていなかったとしたら、かろうじて陸の輪郭程度はわかるかもしれませんが、それ以上離れていたなら、海上の船から陸地の細部を望むことは、いくらなんでも無理だと思われます。南西の追い風を受けて、なおかつ、ドットマンなどを望むことができる、ということの合理的な解釈は、ひとつしかないだろうと思うのです。それは、イギリス海峡に入るとき、ビスケー湾北側の海域から針路をそのまま北北東あたりに取って、シリー諸島近くまで帆走を続け、その後、英国の沿岸沿いに進路を東北東にとって進む場合です。
                             
しかし、「スペインの淑女たち」で唱われている英国の水夫達は、勅命を受けてスペインに赴任し、相応の期間の後に帰国の命令が発令されたので、喜び勇んで故国英国へ帰っていく、という状況下にあるはずです。一般的にこのような場合、わざわざ時間をかけ、余分な距離を走るということまでして寄り道をする、というのはちょっと考えにくいのではないでしょうか。

しかも故国は目と鼻のさきです。南西の追い風を受ける場合ではなく、北東の向かい風に対して間切って海峡を上り、自分たちがどこまで進んできたか、を確認しなければならない、という事情がない限り、最短ルートを取って、一刻も早く帰りたい、と思うのが本当ではないでしょうか。

このように考えると、「スペインの淑女たち」の2番と3番との歌詞の整合性には、いささか疑義がある、と言わざるを得ません。

下の図でのラインは、北東の風を受けて間切って海峡を上る場合のルート(概略)。
のラインは、南西の追い風を受けて海峡を上る場合のルート(概略)。

イギリス海峡<English Channel>

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