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そろばん問答

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このコーナーは、全国の小学5年生が社会科で、伝統工芸品について勉強する際、全国の小学生から送られてきた質問を簡単にまとめたものです。
小学生の皆さん、是非、参考にして下さい。

■雲州そろばんの歴史

雲州そろばんが作られ始めたのは、1832年(天保年間)に島根県仁多町の大工 村上吉五郎(写真)が広島(芸州)のそろばんを参考に、地元で産する樫(かし)・梅・煤竹(すすたけ)を用いて大工道具で作り上げたのがきっかけとなりました。
雲州地方では、日本刀の材料として使われる玉鋼(たまはがね)が産出され、珠に使う硬い木を削ることができる良質の刃物が生産されていたことが、そろばん作りが根付いた要因だったようです。
さらに製造法が公開されると生産量は増加し、地場産業の基礎となりました。
戦後、製造工程は機械化され大量生産されるようになりましたが、1985年、手作り製法を保持するため、通商産業大臣(現:経済産業省)指定の伝統工芸品となりました。


■そろばんの産地

  そろばんの産地は、次の二つがあります。

 1.雲州そろばん ・・・ 島根県仁多郡仁多町及び横田町

 2.播州そろばん ・・・ 兵庫県小野市

■そろばんの原材料

そろばんは大きく分けて3つの部分から出来ています。

1.珠 ・・・ 岩手県産のカバ・鹿児島県産のイス・ツゲ(中国産も使用)
2.枠 ・・・ アフリカ黒檀・東南アジア産の縞黒檀・普及品には特殊強化木
3.芯 ・・・ 芯竹には山陰地方の物が良質とされ使用されている。
        芯竹=すす竹 80年から120年くらい経った茅葺屋根の骨組みに使用されたものが良いとされている。

■種類・用途

そろばんの種類には、次のものがあります。
 
携帯用そろばん・問屋そろばん・学用そろばん

それぞれ5つ珠・4つ珠があり、長さ・大きさなど様々です。

■特徴

雲州そろばんは、堅木(黒檀・紫檀・ツゲなど)を長い年月の間、自然乾燥させて物を材料にし、仕事の大半を手作業で作る。
一丁一丁に職人の銘(名前)を刻み自身の持てる製品を作っており、その輝きは工芸品的要素を含んでいる。

「質の雲州」 → 1.材料の吟味  枠材・珠材・軸材・・・・十分な乾燥・選別
           2.珠削りの改善及び工夫
             手回しロクロの発明改良により正確でそろった珠が出来るようになった。
           3.入念な組立・仕上げをしているため、そろばん塾などより評価されている。
           4.ワンタッチそろばん・滑り止め付きそろばんの開発など、常に新しい工夫をしている。

■製造工程

いくら機械化が進んでも、最終的には手作業で作り上げていくので、今も昔も作業工程は変わらず、187工程もある。
製作時間は、一丁につき約2日間くらいかかる。

■生産における苦労・苦心するところ

1.原材料の確保 ・・・・・ 国内産の堅木が減少し、ほとんど外国産に頼っている。
2.使う材料の種類によって、一つ一つ感覚が違う。
3.お客さんの要望に応えなければいけないので神経を使う。

■生産に携わっている人の悩みや願い

1.需要が減っている
2.後継者不足なので将来的に不安なところ(職人平均年齢 約60歳)
3.今の時代、パソコンや電卓に押されているが、昔からの「読み書きそろぱん」を大切にしていき、これからの時代も「そろばん」が残っ  ていてほしい。


■そろばんの効用って?

1.指を動かすことによって脳の中枢神経を刺激し頭の回転をよくする。
2.珠算を学ぶことにより算数の理解が早くなる
3.暗算が確かになり数に強くなる。

人類は、手や指を使うことにより、他の動物より優れた生物になりました。
昔の子供はナイフで竹とんぼを作って飛ばしたり、色々な細工をしたりオハジキやお手玉、綾取りなどをして遊びました。このような遊びは、器用さを養うほか脳を刺激発達させることに役立ちました。
赤ちゃんは、始めは硬いもの軟らかいものでも同じ力で握りますが日がたつにつれてそれぞれの物に応じた握り方をするようになります。
これは手や指を動かすことにより脳が発達していくことを示すもので、このことは近年脳の生理学や心理学によって判明し証明されているところです。
手や指を動かすいうだけでなく、目的をもち、考え考え動かす方がはるかに脳の働きを良くし、またその発達を促し老化を防ぐことに役立つものです。
出てくる数の順序が定まっていない珠算は考えながら手指を動かすのでもっとも理想的な運動であり脳を働かせるものといえます。

■将来に向けての展望

雲州そろばんの産地として横田町は、平成6年よりタイ王国でのそろばん指導事業を進めており、小さな町の国際貢献事業として高い評価を得ています。
タイ王国のロイエット県を中心に沢山の中学生が横田町の指導のもと、日本式そろばんを学んでいます。
平成9年5月にタイで行った指導者養成事業が、タイ王国教育の副大臣の目にとまり、平成9年9月にタイ教育省関係スタッフの視察、10月にタイ王国ロイエット県の中学校教師を招いてのそろばん指導法の研修実施、11月にはタイ王国教育省副大臣・事務次官・国立教育研究所所長などが視察のため来県した。
今でもこの事業は継続していて、毎年、タイからそろばんを習得するため2名の先生が来ており、珠算検定の2級・1級を取得している。
また、タイではまだまだそろばんの数が少ないため、横田町と島根県が「タイへそろばんを送ろう実行委員会」を設置し、全国から不要になった中古算盤と、算盤を購入するための募金を集っている。あわせて一人2,000円で算盤のオーナーとして登録が出来、戴いたお金で新品の算盤を購入し、その算盤にはオーナーの名前を刻み込んで、タイへ送っている。(オーナー制度)

こうした事業を成功へ結びつけるため、低迷する算盤の地位を再び確立し、生産・販売・雇用で明るい見通しが期待される。

←写真は、実行委員会から送られた算盤を手にする、タイの子供たち





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