終わりのないまどろみの中で



……わけわからんです。ごめんなさい


 あったかい……。ここは、とても。空気がすごく優しくて、眠くなる。
 皆もここに来ればいいのに。どうしてここに来ないのかな?
 ここは、こんなに気持ちいいのにね。
 辛いこともない。哀しいこともない。面倒くさいことも、何も。
 ここはこんなに素晴らしいのに。
 ま、そりゃあ来ようとおもってこれるところじゃないけど、ね。
 あれ? 誰か来たみたいだ。
『……でも、それでいいの?』
 ん?
 なんだって?
『そんなぬるま湯の様な所の中で、ただぼんやりしていていいの?』
 ……だれだい。君は。
『そんなこと、どうでもいいじゃない』
 そうだね。いちいち聞くのも面倒くさいし。
 とっととどこかへ消えてくれないか?
『いいわよ。さっきの質問に答えてくれたらね』
 ……いやだよ。面倒くさい。
『そうかしら。そんなに考える様な事じゃないでしょ?』
 ………。
『あなたはこういうだけでいいじゃない。「これでいいんだ」って』
 …………。
『どうしてそう即答しなかったのかしら?』
 ……………。
 うるさいな。どうでもいいだろ?
『いいじゃない。一言答えるだけでしょ。このまま私と問答するよりも面倒くさくなんてないじゃない』
 ……いいだろっ。
 放っといてくれ!
 僕はこのままこの場所に居たいんだよ。苦しみたくないんだよ。悲しむなんてまっぴらだっ。
絶対にもう人の重荷を背負って歩くものか!
『………』
 だいたいなんだよ。せっかく楽になれたんだ。僕はここでこのままこうしていたいんだよ!
『それは……』
 なんだよっ。
『それは……ただの甘えよ!』
 なっ……。
『そりゃあ、あなたはずっと苦しんできたかもしれない。これからもそうだったかもしれない。
何もかもが嫌になったのかもしれない……』
 ………。
『でもね、だからってあなたの命を捨てることないじゃない』
 ………!
『あなただって、生きていたかったんでしょ? 生きて、もっと楽しいことしたり、嬉しさを皆で分かち合ったり、
やりがいのあることしたり……したかったんでしょ?』
 ………。
『生きてれば……陳腐な言葉かもしれないけど、生きてればきっとあるよ。良いことだって。あなたの望んでることだって……』
 だけど……。
『うん。ないかもしれない。でもね、はじめから諦めたら何も起こらない。悪いこともない代りに、良いこともないよ』
 ………。
『もう一度、頑張ってみようよ……』
 ………。
『………』
 ………。
『………』
 ………。
『………』
 ……わかったよ。
『……!』
 もう一度だけ、頑張ってみるよ。
『本当に?』
 うん。
 君の熱意に免じてね。
 ………。
 ……君がそんなに嬉しそうにすることじゃないだろ。
『だって……。嬉しいんだもの』
 そ……っか。
『うん……』
 さて、どうやってここを出れば良いのかな?
『私が、連れてってあげるよ。はい』
 え?
『私の手を握って、ついて来て』
 あ、うん。
『どうしたの?』
 い、いや、別に。
『じゃ、行こうか』
 ああ。そうだね。行こう!


 そういえば、君の名前を聞いてなかったね。
 君の名前は?
『私? 私の名前は……』






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