つれづればなし


ここでは葵が徒然ながらに思っているような
駄文を語っていこうかと思いまする。


★敷金のはなし

 さてさて、そろそろ葵も一人暮らしについて考える年頃となりました。
 一人暮らしをするにあたって少し気になることといえば、そう。アパートの賃貸借です。
 どんな部屋かー、とか、内装はどうしよう、とか、夢は膨らむばかりですねぇ。
 しかし、今回はあえて現実を見据えてみましょう。
 敷金。そう、アパートを借りるとき家主さんに払っておかないといけないお金ですね。
 礼金やら敷金やらよくわからない言葉ですが、今回のポイントは「敷金」。これです。
 では、敷金について辞書でひいてみましょう。

  しききん 【敷金】
   不動産の賃借人が賃料の支払いの保証のために賃貸人に預けておく金銭。
   賃借人に債務の未払いがない限り賃貸借契約の終了の際に返還される。
   古くは広く売買契約その他の保証金や礼金をもいった。しきがね。


 だそうです。なるほど。
 ちゃんと返済されるお金だそうですね。これなら一安心。ちゃんと支払っても大丈夫そうですね。
 いや、ちょっと待ちましょう……はたして本当にそうなんでしょうか?
 ニュースや新聞なんかを見ていると、時々敷金に関してのトラブルが目に付きませんか?
 そのトラブルというのは大抵、「貸主(不動産・大家さん)が賃借人(借りてる人)に敷金を 返さない。或いは追加で料金を請求してくる」といったものではないでしょうか。
 どうしてこのようなトラブルが起こるのでしょうか?

 まず、どのような理由から敷金が返ってこないかについて視点を絞りましょう。
 貸主としての言い分は、

貸主
 「うちのアパートを貸したYさんは借家を原状の状態より悪化させた。建築価値を減少させた。 従って、賃借人の収去義務、原状回復義務により敷金から費用を全額負担させてもらったのである」


 このようになるかと思います。ここで、「全額負担」という言葉を憶えていてください。
 収去義務、原状回復義務とは一体なんのことでしょう?
 民法第616条第598条には、「賃借人たる借地権者は賃貸借契約終了時の義務として 賃借目的物たる土地を賃借権成立時の原状に復して返還しなければならない」とあるようです。 つまり、部屋を汚したり壊したり傷つけたりしたら元通りにして返せ、ということで、 これが収去義務・原状回復義務です。そうなると上記の貸主の言い分は正しいことになりますね。
 はて。それではどうして借りる人は敷金を返せっていうのでしょう?
 もちろん、納得がいかないからですよね。
 では、次に賃借人Yさんの話です。

Yさん
 「待て。私は確かに煙草で天井や壁にヤニをつけて汚してしまった。その分を請求されるのはかまわない。 しかし、他は汚しも傷つけてもいない。どうして敷金として支払った15万円がまるまる返ってこないのだ」


 ってとこでしょうか。あ、ちなみに、敷金15万円って数字は仮の数字ですけどね。
 はてさて。壁紙張替費用、某会社での相場は1050円/m〜1400円/mだそうです。
 平均約1200円と考えましょう。
 天井と壁の長さで合計50mと考えると……6万円ですね?
 原状回復義務で6万円取られるにしても確かに9万円返ってこないとおかしいことになりますね……。
 ……ここで、「いや、原状回復しないといけないなら、風雨で雨戸にサビが浮いたりした分も 負担しないといけないんじゃない?」と思っておられる方もいるんじゃないでしょうか。 葵もそうでしたけど。
 けれど、民法606条によると、「(通常使用による)賃貸借の目的物にかかる修繕は原則貸主が 行うこと」となってます。 つまり、自然に起こりうる損壊の修繕費用は貸主が自分で負担しなきゃだめなんですね。
 でも自然の劣化に対する修繕費も馬鹿にならない。だから貸主は敷金を返済したくないんです。

 どのような理由から敷金が返ってこないかはわかっていただけたでしょうか?
 じゃあ、どうしましょう?
 泣き寝入りですか?
 お金は返してもらえないんでしょうか?
 それが普通なんでしょうけど。悔しいし、損した気になりますよね。
 これに対抗する手段には何があるかというと……裁判ですね。

 裁判というと近寄りがたかったり面倒くさそうな気がしますが、この場合は小額訴訟っていうのができます。
 小額訴訟とは簡単に言えば、「30万円以内なら即日結審、即日判決が下されますよ」という裁判です。ただし、30万円を請求する訴訟で3千円の収入印紙と5千7百円の切手がいるのはご愛嬌。
 つれづればなしで役に立つことを書くのもなんなので少し割愛しますが、自分がよっぽど部屋を汚したりしなければ、大体この裁判によって適正な金額が返ってくることになるようです。
 上の例のYさんの場合なら、おそらく9万のほとんどが返ってくるでしょうね。

 しかし大体にして、何を以って通常使用かそうでないかを決めてるのでしょう?
 それは、ちゃんとしたガイドラインが取り決められてるそうです。
 それによると、賃借人に原状回復の義務がある場合というのは、

・賃借人の住まい方、使い方しだいで発生したり、しなかったりすると考えられるもの(明らかに通常の使用等による結果とはいえないもの)
・基本的には通常使用で発生する損耗であるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗が発生または拡大したと考えられるもの

 とのこと。
 アパート全体にあるカビとかサビとかは入らないわけですね(ただし、賃借人がカビの生えやすい部屋の使い方をしたら負担しなければいけないかもしれません)。
 でも、インクとか醤油とかをこぼしてシミがついたりしたらアウトです。

 さて、敷金についてまとめてみましょう。

・敷金は返ってくるお金である。
・通常使用による損耗は貸主が自己負担
・通常使用によらない損耗は賃借人の負担
・もし敷金の返済が適正に行われなければ小額訴訟により話し合うこと
・っていうか、ちゃんと部屋の掃除をこまめにしましょう

 上記のことをちゃんと守っていれば敷金を支払っても怖くない……かもしれません。
 あと、初めて部屋に入ったとき、部屋中の写真をとっておけば、前の賃借人の汚れを自分のせいにされず、裁判で有利になるそうです。写真はとっときましょう。
 っていうか、本当に部屋の掃除はしないと全額負担とかありえるので、掃除はしないといけませんね。
 今回はマジで語った桜町でした。



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