で、なんか僕って不幸だなって思うわけさ




「ディクス!早く来なさいよ!」

セシリアが僕に怒鳴ってくる。

「ったく。それでも戦士でしょぉっ!?それくらいの荷物持ったぐらいで

フラフラすんじゃないわよっ!」

そんなこと言われたって…

僕は仲間と僕の6人分の荷物を一人で運んでいるんだ。

「は、はいぃ…」

僕は相変わらずフラフラ歩いていく。

「いやいや、大変ですねぇ」

「大変だと思うなら手伝ってよ。ファースト」

「いえいえ、僕は楽器より重たい物を持ったことがないのでぇー」

そういってファーストは歩いていった。薄情者め。

「ちょっと、遅いってば!ミスティもチックルも先行っちゃったわよっ!」

「はーいぃぃ」

…不幸だ。

はぁ…ため息が出てくる。

何故僕がこんな事になってしまったのか考えてみよう。

5日前のこと…



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ワイワイガヤガヤとやかましい声が聞こえてくる。

ここは芸術の都ベルダイン。

ああ、僕の事を話しておこうか。

僕の名はディクス。ディクス・ミランだ。

半年前まではちょっとした貴族だったんだ。だったんだけど…

1年前に事故で両親が死んでね。で、そっからどんどん没落してって…

今じゃ15歳っていう若さで冒険者なんかになってたわけだ。

まぁ、それは置いといて。

半年の間かよってた剣術学校に受講料を払ったら今月いっぱいで宿代がつきる。

ということで、僕は金稼ぎのため、冒険者の宿とか呼ばれる場所へ向かった。

僕は冒険者の宿がいくつかある通りまでやってきた。

「さて、と。どっちに入ろうか」

僕の今立っている所から近いのは2個所あった。

『葵の桜町亭』と『戦神の祝福亭』の2つ。

少し悩んだ末、僕は『戦神の祝福亭』を覗き込んでみた。

中はいかつい男達が酒を飲み交わし熱気があふれていた。

あんなのにぶつかられただけで僕のか身体は砕けてしまいそうだ。

「ごめんなさい!あなたとは遊びだったのよっ!」

僕は逃げ出した。

「高望みせず、僕みたいな初心者が多くいる様な所でもいいよね」

僕はそう呟くと『葵の桜町亭』の方を覗いた。

中には初心者7割、中級者2割、上級者1割ってところで、僕の望み通りの所だった。

僕は目を輝かせて中に入っていった。



なにはともあれ、喉が渇いたのでカウンターに座って飲み物を頼んだ。

「マスター、エールを下さい」

「はーい。あれ?君はなんか見ない顔ですね」

マスターは若かった。20前後にしか見えない。

しかし、彼(彼女?)の耳は尖っていた。つまりエルフなのだ。

エルフはよく年齢がわからんのだ。特にこの人は性別も分からん。

まぁ気にしないことにしよう。

「ええ、今日初めてここに来たんです」

「そうですか」

マスターはにこりと笑ってエールをついでくれた。

「依頼でこられたのですか?それとも…」

「請け負う方できたんです。近頃サイフが軽くて」

「なるほど。そういえばあなたはお一人ですか?」

「ええ。まぁ」

「冒険者になってどれくらいですか?」

「まだなったばかりの初心者ですよ」

「そうですか。ならパーティを組んだ方がいいですよ。いえ別に熟練した人なら

組まなくてもいいってわけではないですけど」

「うーん。そうですね」

僕はエールをちびちびと飲みながらマスターの話をきいていた。

「でも、僕みたいな初心者を入れてくれるパーティってあるんでしょうか?」

「大丈夫ですよ。これだけ人がいるんですから、きっとありますよ」

マスターが微笑んで言った。



マスターのいう通り僕は仲間集めを始めた。

職業は戦士、ということで回ってみたら、2人簡単に見つかった。

「…というわけで、あなたがた2人に仲間になってほしいのですが…」

まず、30前後の男とグラスランナーの2人に頼んでみた。

すると、

「ええ、いいですよ。詩人の僕と盗賊のこいつだけじゃ旅は出来ませんしね」

「本当ですか!?ありがとうございますっ!」

「ははは、僕はファースト・マンカインド。よろしく頼むよ、ディクス君」

「オレはチックル・ポップ・フォンだ。ヨロシクな。ディクス」

「はい!」



それから、戦士と盗賊と詩人だけじゃあまりにも情けないので、

もう少し誰か入れることにした。

ファースト等と組んでから数十分して、僕は彼女達と出会ったのだ。

「んで、私達に仲間になれって?」

「ええ、あなたは魔術師、そちらの方は精霊使いでしょう?

僕らと組めばバランスがとれると思うのですが…」

次にまともに僕の話を聴いてくれたのは20ぐらいの女性と15、6の少女だった。

とはいえ15,6の少女はエルフなので年齢はよく分からないのだが…

「そうねぇ。じゃね200で手をうってあげるわ」

「は?」

「だから、200ガメルでパーティを組んでやるって言ってんのよ」

ここで、“なら仲間にならないでいい”と、はっきり言っておけば良かったのだ。

今ではものすっっごく後悔している。

「わ、わかりました。どうぞ…」

僕は200Gを支払った。

「オッケーっ。商談成立ぅっ!私はセシリア。セシリア・セルンよ。よろしく!」

「ミスティ・ラランです。どうぞよろしく」

「は、ははははははは。よろしく…」

ちなみに30男がファースト、20女がセシリア、

グラスがチックルでエルフがミスティ。間違えないように。



そうして、僕ら5人はパーティを組んだのだ。

そしてマスターから仕事をもらい…



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で、今にいたるのだ。

「あんた遅すぎっ!とっとと来なさい、うすのろっっ!」

「はいいぃぃぃ…」



…で、なんか僕って不幸だなって思うわけさ。