作戦開始
作戦……そういや近頃そういうのないわね。
あの緊迫した空気、私好きなんだけどね。
「ああ…うん。いい方法があるよ」
僕はそう皆に答えた。
「本当なんですか? ディクスさん」
ミスティが半分疑ったように言う。
まぁ、いい方法ていうかね、ってもんだけど。
まいっか。
「ほらほら、とっとと言いなさいよ」
「わかったよ」
うるさいな、セシリアは……
なんて思ってるとまた何か言われそうだ。
「あのさ、どっちかに加勢してやられる、ってところに僕らは注目しすぎなんだよ」
「ふへ?」
チックルがまた間抜けな声をだす。
「……ああ、なるほど」
どうやらユーロは僕の言いたいことがわかったみたいだ。
セシリアの方は?
うん、こっちもわかった、って顔してる。
「つまり、あんたはこう言いたいんでしょ?」
セシリアが呟くように説明した。
「二手に分ければいい」
「「あぁっ!」」
どうやらチックル以外はわかったらしい。
「どういうことさ???」
疑問符を浮かべている。
「おいおい、相棒ここまでヒントをもらったらわかるだろう」
今度はファーストがチックルに説明する。
「僕らはどっちか一方に戦力を傾けようとしていた。
つまりゴブリンを倒す、ゴブリンから守る、ってね」
それにユーロが続ける。
「で、そうじゃなくて、だ。戦力を両方に分ける。
例えばあの女が変な動きをしてもその動きを封じれる戦力を作る。
そんで、もう片方の戦力がゴブリンを討つ。そういうことさ」
「あー、なるほど……」
とりあえず、わかった…んだろうかね?
ま、いいや。チックルもきっとわかっただろう。うん。
「時間ないからとっとと班分けしましょ」
セシリアが仕切る。
「ゴブリンは……そうね、チックル、私。あとユーロだけでいいでしょ」
「ええ!? だ、大丈夫なのセシリア……っ」
ミスティが心配そうに言う。
「大丈夫よ。つよーい戦士さまがいるもの。ねえ?」
「へーへー」
ユーロが耳を掻いてそれに答えた。
「ん……おいおい、ねーちゃん! なんでおいら大変そうな方なんだよ!!」
「うるさい、こんなときくらい役立てっててーのよ」
セシリアはにべもない。
「ま、まぁまぁ。じゃ、僕らは女の人の方だね」
僕はなだめるように言った。まあ、確認の意味もあるんだけどね。
「ねねねねねっ、私はユーロの方ね!」
「却下。お前は女見てろ」
「ぅえぇぇぇぇっっ?」
サニーの言葉をユーロは瞬間に否定してしまった。
「ひどいっ、ユーロ!」
「なにがだっ。危ないからさがってろっての」
「……あっ。ユーロってば私のこと心配してくれたのね! やっぱりユーロ大好き!!」
「うるせっての。邪魔だ」
「あっ、やっぱひどぉいっ」
うーん、いつものが始まった……
「きみたち! そんなことしてる暇はないだろうっ?」
……今のだれが言った?
……いやー、うん。そうだね、ファーストです。はい。
「どーしたんだよ。相棒……」
「いやいや、たまにはシリアスになろうかと」
……僕らの間に脱力した空気が漂う。
「と、とにかく! 作戦開始!!」