罠かもしれない


罠だろうか、しかし違うかもしれない。
そういうのが一番いらついてくるかもね。
決断しなければいけない、けど間違ってるんじゃないだろうか?
そうやって迷ってしまう。
そして、手遅れになるのよね。



「話を続けるぞ」

俺は言った。

「んで、そのフィゼアの木の化けもんはだ。

どうやら、木の枝とか触手みたく動かして、叩きつけてきたり巻き付いてくるらしい」

「厄介そうな化け物ねぇ」

全然そうは思ってなさそうな口調でセシリアが呟いた。

「……つづけるぞ」

「うん」

ディクスが代表してうなづく。

「で、さらにそいつは根をいろんな形に変えるらしいんだ」

「ああ、それで……」

ディクスが何か思いついたように口をひらく。

それに対しミスティが、

「どうしたんですか? ディクスさん」

と声をかける。

「ほら、フェイモンさんが言ってたじゃないか」

「ああっ、そういうことか」

「そーいうことね」

ディクスの言葉にファーストとセシリアが今度は口を開いた。

「どーしたのよぅ?」

サニーが疑問符を浮かべる。

「どーしたんでしょう?」

ミスティも同上だ。

さして、まずファーストが言った。

「えーと、いやいや。僕らがフェイモンさんから依頼を受ける時にさ……」

「化け物の形が一定してないって言ってたのよ」

「ああ……僕のセリフを……」

セシリアに横はいりされてファーストは、座って服の裾を噛みつつ悔しそうに呟いた。

「ま、とにかく。それでその根っこのことを聞いて」

「あ、根っこが形を変えれるから形が一定してなかったんですね」

「うん」

ディクスの言葉に、ミスティが合点がいったようにいった。

「なるほどね」

呟いて俺は頭を掻いた。

「ま、いいや。俺が知ってることもここまでしかねぇよ」

「でもこれだけでも情報があって良かったよ」

そう言ってデイクスがほうと息をついたときだった……

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」

そんな悲鳴が聞こえた。

「なんだ!?」

「なんなのよー!」

「女性の悲鳴だね!」

「大変です!」

「ほらチックル、寝てないで起きなさいっての」

「誰のせいだよ!」

「とにかく行こう!!」

俺たちはディクスの言葉を合図に走り出した。

少しして開けた場所があった。

そしてそこには、悲鳴を上げたと思われる女が2人と、赤褐色の肌をした妖魔−−

「ゴブリン……」

そう、ミスティが呟いた通りゴブリンが……

20体程いた。

「なんちゅー数だい……」

ファーストが呟くのも無理もない。

「ユ、ユーロぉ…早くあの人たち助けなきゃっ」

「よぉっし。一番ちっくるいきまーっす!」

「待て!」

「まちなよ、チックル!」

「アホちびストップ!」

「だわっ!?」

俺とディクスとセシリアがそう言って制止する。

で、ついでにチックルは止まろうとしてこけた。

「なんだよ、3人して」

「アホちび。ちょっと聞くけど、本当にあいつらは人間とコブリンなの?」

「ふぁへ?」

チックルが間抜けな顔をする。やれやれ。

「だから、さっき話したろ? 化けもんは根の形を変えれるんだぜ」

そう言ってやる。

「でも、色もあるし声とかも出してるんですよ?」

そうミスティが言う。そして、それにディクスが答えた。

「うん、本物かもしれない。

けど、もしかしたらそういう魔法とかあって使えるのかもしれないだろ?」

「罠だったら大変じゃんよ」

セシリアがそういってうなづいた。

そう、罠かもしれないしそうじゃないかもしれないのだ。

「けど、本当に本物だったら……」

まぁ、確かにそうだな。何かいい方法はねぇもんか……

「あ」

全員がディクスに注目した。

「どしたのよぅ? ディクスぅ」

「ああ…うん。いい方法があるよ」