俺の名はユーロ
「で、もうちょっとで次の街に着くんだよね?ユーロ」
「まぁね。たぶんあと半日ぐらいあるきゃ着くだろ」
サニーが話し掛けてきた。
俺の名はユーロ・ティーク。旅の戦士って奴だ。
まぁ、簡単にいって冒険者だな。
3年前、いきなり家を出ていった自分勝手な父親を、見つけて
ぶん殴ってやるため旅をしている。
ちなみにいまは18歳だ。
サニーっていうのは、俺が1年ほど前にどっかの森で拾った妖精(ピクシー)だ。
フルネームはサニー・ファインだそうだ。
「いい天気ねぇ。こんな日は気分がいいわ」
「お前の場合、雨の日だって気分いいだろうが」
「あっ、ひっどーい。なによおたんこなすぅ」
「うっさい。チビ」
「うぅぅぅ…ひどい!泣いちゃうぞっ」
「泣けよ」
「えーん。えーん」
「嘘泣きだろ。完っペキに」
「えへっ♪ばれてた?」
俺達がそんな他愛のない会話をしていると…
「ようっ!兄ちゃん。命が惜しけりゃ金目のモン置いていきなっ!」
「あん?」
俺が後ろを振り返ってみると、そこにいたのは、茶色バンダナにボロ服の10余人の男達。
俺はこっそり道具袋にサニーを放りこんだ。
そう、これはど見ても…
「うっわー。あんたら追いはぎ?べったべただねぇ」
「んだと!?こらぁっ!」
「だぁれがべたべただと!?誰がぁっ!」
「すまん。あんたらだわ」
「ムキィィィィィィィッッ!!」
おやま、どうやら少しは気にしてたみたいだな。
「野郎どもっ!落ち着きやがれっ!」
親分(らしき奴)が手下を怒鳴りつけた。
そして、そいつはこっちに向き直ってこう言ってきた。
「おい、あんた。あんたも命は惜しいだろ?おとなしく金目のモンよこしぁ、
見逃してやるぜ?どうだい、別に悪い条件じゃないだろ?」
やっぱべたべただな。べたべた団と呼んでやろうか。
いや、そんなことより、だ…
「俺、金目のモンなんて持ってないぜ?」
「嘘付けっ。ならその背中の物はなんだ?」
「ああ、これか?」
「布かかぶっててよくわからねぇが、長さからして槍だろぅ?」
「ま、当たらずとも遠からずってとこかな」
そう、俺が背負っているこれは、槍にそっくりだ。しかし、金目のもんか?
「親分、こいつ絶対なめてますぜ」
「やっちぁいましょうぜ。親分」
「ああ…」
とっととかかってくりぁいいのに。
と、いきなりサニーの馬鹿が飛び出してきた。
「ばぁーか。ユーロはあんたらなんかに負けたりしないわよーだっ!」
盗賊達はサニーを見て呆気にとられている。そりゃそーだ。
「人間の言葉を喋る妖精、か」
「親分…」
「ああ…」
ったく…だから道具袋に押し込んどいたのに。
「おい、あんた。そのおちびちゃんを渡してくれりゃぁ、生かして帰してやるぜ?」
「断る」
「だーれがチビですってぇぇっ!?」
「ふぅ…しかたねぇな。野郎どもっ!やっちまいなっ!」
掛け声とともにべたべた団が一斉に襲ってくる。
だがな…俺だって黙っちゃいねーよっ!
「よっしゃぁぁぁぁっ!いくぜぇぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!」
「よーしっ、やっちゃえぇぇーっっ!」
俺は『これ』の布をばっとはがしつつ走り出した。
「このハルバードの威力っ!気が済むまで見せてやるぜぇぇぇぇぇっっ!!」
次の瞬間、
「うっ、うわぁぁぁぁぁっっ!」
べたべた団の悲鳴が辺りに響きわたった。