命の恩人
「あ、あれはっ…!?」
なんてこったっ!
人が戦っているじゃないかっ!
しかも1対多で、1人の方が押してるじゃないかっ。
すごいなぁ…
はっ、そうじゃないっ!
「あの男の人をたすけなきゃっ!」
僕はとりあえず言ってみた。
だが、
「なんでよ?」
セシリア。こいつが反論してくるんだよ…
「だって、1人なんだよっ?」
「1人で戦ってるからいい奴とは限らないわよ」
「でもっ…」
「なぁ、兄ちゃん達」
チックルが僕らに声をかけてくる。
「もぉ終わっちゃうよ?」
ホントだ…
僕らがあっちを見ると残りはあと1人しかいなかった。
「やっぱ、すごいや…」
この言葉には誰も反論しなかった。
しかし、僕らが呆気にとられていると…
なんとその残りの1人がこっちに走ってきたじゃないかっ!
「うわっ、こっちに来るぞ!」
ファーストがそう叫んだ時にはもう残りの1人がこっちに突っ込んできたっ!
そしてそいつは僕らの中の1人を捕まえてこう言った、
「てめぇらっ!コイツの命が惜しけりゃ動くんじゃねぇっ!!」
ああ…そのコイツってのは僕のことさっ!ちくしょーっ…
しっかし、この人のセリフってよくある言葉だよね。
もしかして一種の言語なのかな?
いや、そうじゃなくって。今の僕のこの状況、どうしたもんかね?
まぁ、皆ががなんとかしてくれるだろ。
「勝手に殺せば?」
あまかった。
「いや、仲間といっても一時的なもんだし…」
「オイラには関係ないから」
「ごめんなさい、ディクスさん…」
僕は泣きたくなってきた。
と、ガツンッ、音がして僕は解放された。
「大丈夫か?少年」
「え?」
振り向くと、さっきの1人で戦ってた人が立っていた。
「すまないね。君たちを巻き込んでしまって」
「あっ、いえ、僕の方も…」
僕がその人に言葉を返そうとした時、
「大丈夫かっ!?ディクスっ!」
「怪我はないっ?」
「オイラめちゃくちゃ心配したよっ」
「何もされてませんかっ?」
こいつら…
怒りを抑えつつ、思いっきり冷たい目で見てやった。
そして、
「いえ、僕の方も助けてもらったわけですし、気にしないで下さい」
と、僕の命の恩人の方に向き直った。
「うん、おりがとう。えーと…」
「ディクスです」
「ディクス君、怪我はないかい?」
「ないと思いますよ。あとディクスでいいですよ」
「ああ、そうする。さて、俺の紹介がまだだな」
恩人さんは一呼吸おいた。
「おーい、僕らのこと無視するなーっ」
無視しとこう。
「俺の名はユーロ・ティーク。俺もユーロでいいぜ。敬語とかもなしな」
「はいっ…じゃなくて。ああ、ユーロ。改めてありがとう」
僕とユーロは握手した。
そういや、さっき僕のことを少年って言ってたけど、この人も結構若い。
たぶん17,8ぐらいかな?
しかーしっ!いきなり目の前がぶれて、僕の意識は薄れていった。
そして、完璧に意識を失う直前、女の怒鳴り声が聞こえたきがした。