てくてく
てくてくてくてくてくてくてくてくてくてく…
「なぁ…あんたら馬車とか買ってねぇの?」
「ないよ」
「ないね」
「ないです」
「ないわよ」
………………
きっぱり言うか?
そういうこと…
「…僕ら、金もってないんですよ。あんまし…」
「ユーロさん、我慢して下さいね…」
そう、ファーストとミスティがつぶやいた。
「いや、いいんだけどな」
「気にしなくていいわよ。ミスティ」
セシリアが口をはさんでくる。
「ただ進む方向が一緒なだけで、仲間でも何でもないんだから、
気にする必要全くなし。
それに馬車持ってても乗せてやる気もないわ」
「なんですってぇぇぇぅむぎゅっ!?」
「うっさいから黙ってろ…」
口をはさんできたサニーを押さえつけると、俺はセシリアの方に向き直った。
「どうやら、あんたさんは俺の事が嫌いなようだな」
「別に。私は本当の事を言ったまでよ」
「へぇ、そうかい」
ったく、なんて喧嘩腰の女だ…
俺とセシリアはお互い火花を散らしてにらみ合う…
と、
ドゲシッ!!
「アタァッ!?」
チックルが後ろから思いきり、セシリアの頭部に飛び蹴りをくらわした。
そしてセシリアは前につんのめって倒れ込んだ。
「いいかげんにしなっ、姉ちゃん。
仲間だろうがなかろうが、どうでもいいじゃないかっ!」
おぉぉ、そうだそうだ。
「それに姉ちゃんが喋ってると、オイラが喋れないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
をいおひ…
「チィックルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ………」
「はうぅっ!?」
チックルの背筋が最大以上に伸び上がる。
セシリアが立ち上がったのだ。
「よくもやってくれたわね…?」
しかし、もうチックルは20m以上先に走っていってる。
「逃がすかぁっ!エネルギーボルトォォッッッ!!」
『こらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!』
や、やばいだろ、それはぁっ!
俺ら3人の声はみごとにハモッテいた。
…まぁグラスランナーだし、大丈夫か?
バシュンッッ!
「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ!!!」
「きゃっはっはっ!私のエネルギーボルトに抵抗できるとでも思ったかしらっ!?」
う、うーむ…大丈夫か?あいつ…
「大丈夫かしら…チックル…」
「大丈夫じゃないと思うが…まあ行ってみるか」
「そうですねぇ…」
ちなみにセシリアはもうチックルの所まで行ってゲシゲシと蹴りつけている。
……………
うわ、こいつはヒデェ…
「チックルゥゥゥ。生きてるかぁぁぁ?」
ファーストが声をかける。
「はぅぅ…」
「おぉ、生きてる生きてる」
「でもひどい傷…」
俺らはセシリアの方をじぃっと見やった。
「な、なによ…私のせいだって言うのっ!?」
じゃなければ誰のせいだと言うのだ…?
俺らはセシリアの言葉に大きく呻づいた。
「いいわよいいわよ。どーせ…」
なんかいじけ出したし…
「おーい、ユーロ君。早くこいつを何とかしないと…」
ああ、そうだ。
「まぁ俺に任せときな」
俺はキュア・ウーンズの詠唱を唱えチックルに手をかざした。
「あっ、傷が…」
「治ってく…」
よし完治したっと。
「へぇ、君はプリーストだったのか…」
「まぁ、な…」
なんて話していると…
「おぉぉぉぅぃ…みんなぁ…おいてくなんてヒドイよぉぉぉぉぉぉぉぅぅぅぅ…!」
……………
「あ」
「そういえば」
「ディクスさんの事」
「すっかり忘れてたわね」
………合掌