まさか
まさか、って思うことはいくらでもある。
でも、そのまさかがどうしたっていうのかしら?
大切なのは今までのことを貫き通すことよ
「セシリア、ほんとに大丈夫かしら……」
女の人のところまで走る途中、ミスティが心配そうに呟いた。それにサニーが答えた。
「大丈夫だって。ユーロだってついてるんだから!」
「でも……」
「ミスティ、心配は後にしよう。今はセシリア達を信じて僕らの仕事をしようよ」
「ディクスさん……そうですね」
「よし」
僕らは走った。ゴブリン達はユーロ達が引き付けてくれている。僕らは女の人達を助けなきゃ。
女性の所までたどり着いた時、ファーストが言った。
「大丈夫ですか。可憐なお嬢さん方」
……あほだ。
「え、あ……」
「僕らはあなた達を助けに来たんです!」
呆然としている二人の女性に、僕は声をかけた。
「ゴブリンなら大丈夫。僕らの仲間が食い止めてくれています」
「ほ、ほんとに……?」
「そうです。私達が、あなた方が逃げるのを援助しますので、安心してください」
ミスティの言葉に女性たちは安堵の表情で顔を見合わせた。
「早く、早くぅ!」
「わかってるよ。サニー」
せかすサニーに僕はそう返事を返した。
「ひっ。魔物!?」
やっば……
「ご安心を、お嬢さん。あれは僕らの従順なペットなのですよ」
ファースト……。まだそれやってんの?
でも、とりあえず二人はそれで納得したようだった。完全に気を許した様子はないけれど。
「だれがぺっ……んぐっ!」
ナイス、ミスティ……
とっさにサニーの口を塞いだミスティにありがとうのサインを送る。彼女が頷くのが見えた。
「とにかく入り口へと向いましょう」
ミスティが言った。やはり、女の人は女のミスティの言葉の方が安心して聞けるようだった。
「ここまで来れば安心かねぇ?」
「うーん、どうかな。一番安全なのはちゃんと入り口まで案内することだよ」
ファーストの言葉に僕は答えた。
女性はさっきから言葉を特に発していない。ミスティは、女性たちが興奮した時のために
そばについてもらった。あと、サニーも一緒だと怯えるので彼女は先頭を歩く僕とファーストの横を飛ばしていた。
「しかし、どう思う? ファースト」
「どうって?」
「あの人達だよ」
僕は後ろを歩く、襲われていた二人の女性の方をちらりと見た。
「ああ……」
ファーストは頷き、少し考えてから言った。
「なかなかの上玉だね」
「ちっがああああああああああう!!」
はっ。
後ろを見ると、女性二人と、それにミスティまでがこちらを見てひそひそと何かを話していた。
「いきなり大きな声出しちゃいけないよん」
「誰のせいだよっ」
ったく……
「あ、ディクスぅ。入り口見えてきたよ!」
「え?」
サニーが言うとおり、森の入り口がすぐそこに見えていた。
と、
「きゃああああぁあぁぁっ!」
ミスティの悲鳴!? まさか!!
僕は後ろを振り向いた。