読み
戦いにおいて読みは必要よ。
それがなければ次の日の朝日を見れないのは自分。
それは事実よ。どんな戦いでもね
「ちぃ!」
案の定、シュラの強さは並大抵のものではなかった。
腕が四本あるため少しくらい重い剣――どういうわけか本物の鉄と同じかそれ以上に硬い――が二本で襲ってくる。
片方をさばいても気を抜くと次のもう一本が俺の首を確実に狙ってくる。
俺は、かなり追い詰められていた。
「その程度か? 人間よ」
「はっ、まだまだだよ」
「ふん。威勢だけは一人前、と言ったところか?」
「それはどうかな!」
俺はヤツの剣撃を流し、その返す刃で斬りつける。
「甘い!」
ヤツは俺の動きを先読みし急所へ至る部位をもう一方の刃で防ごうとする。
だが、
「甘いのはお前だ!」
俺はそんなところはなから狙っちゃいねえ。
狙ってたのは……
「うるああああああっ!!」
「な、ぐぁあああああぁぁ!?」
シュラの剣が空を飛ぶ。
いや、飛んだのは……俺が狙ってたのは。
「一方の肩は、腕二本もろとも奪わせてもらうぜ!」
そう。俺が狙っていたのは無防備になったほうの肩だ。
どんなにがんばっても人型をしている限りその関節の動きや力の方向からは逃れられない。二刀流はどちらかの肩を動かしている時、
もう片方の肩を使っている腕はどうしても上手くは動かない。俺が狙ったのはそれだ。
「くうっ……」
「悪いが、俺の勝ちだな」
俺はまだ驚愕の抜けないこの木偶人形にと向っていく。
「……人間め。なめるなよ!」
それにシュラは残った腕を使い素早く剣撃を打ちこんでくる。
「っと」
それを避け、俺はつきを繰り出すが、それはシュラに避けられた。
「ちぃ……。しぶといんだよ!」
「負けんわぁっ!」
シュラが次の攻撃を仕掛けてくる。なかなかの動きだ。が、
「俺に敵うとでも思ったかよ!」
その剣を俺は受け流し、その勢いで自分の剣を横に薙ぐ。
「ぐ……おおおおおおおぉぉぉっ!?」
シュラの胴が泣き別れになり、上半身が空を舞った。
「だから言ったろ。甘いのはお前だってな」
俺は自分の獲物を地面に突き刺し、ふぅっと息をついた。