別れと再会
人は時に別れなければ解らない事があるわ。
でも、別れたものがお互いに分かった答えが、”一緒にいること”だったなら、
その時はどうすればいいのかしらね?
ついにハマンカの入り口に到着した。
嗚呼…なんて長い道程だったか…
「なぁ、ユーロ」
「ん?なんだチックル」
俺はチックルの方を見下ろした。
「おいら達は仕事でここに来たけど、ユーロはなんできたのさ」
俺は小さく笑って答えた。
「知り合いがいるんだよ。ここには」
「ふぅん」
納得してんだかしてないんだか…
まぁ、いいか。
「お前らの仕事ってのはなんなんだよ?」
俺は反対に聞いてみた。
「それははぐっ」
「企業秘密に決まってるじゃない?そんなこと」
答えようとしたミスティの口をふさいでセシリアが言った。
「なによそれ!けちけちしないで教えてよぅ!」
「仲間でもないのに教えれるわけないでしょ」
サニーとセシリアが口喧嘩を始めた。
なにやってんだよ…ったく。
「わかった。ここで俺達は別れよう」
俺は静かに言った。
「そうね、そうしましょう」
セシリアも同意する。
「な、何言ってんだよ!?2人とも!」
慌ててそう言ったのはディクスだった。
「なんだかんだ言って仲良くやってきたじゃないかっ」
「けど仲間にいれたつもりはないわ」
「でもっ…」
ディクスが何か言いたそうに俺の方を向く。
「ここで別れた方がいいだろうな。嫌いな奴と一緒に仕事をこなせるほど、
冒険者は楽なもんじゃないからな」
俺がそう言うとディクスは悲しそうにうつむいた。
「ユーロ君もそう思ってるならしかたないさ」
ファーストが口を開いた。
「いいのぉ?ユーロ…」
「ああ」
聞いてくるサニーに俺は答えた。
「じゃあ…これでお別れですか。さみしいですね…」
ミスティが言った。
「ま、同じ町にいるんだ。また会えるだろ」
俺は言った。
「…そうですね」
そして俺達はお互い別れを告げ、別々の方に歩き出した。
ハマンカの気候は温暖で、冬以外は常に暖かい。
ここではフィゼアという、ひょうたん型の白い果物を作っている。
この果物はとても甘い。
それも、べたべたした甘さではなく、さっぱりしているのだ。
さらに気力が沸いてくる様な、そんな果物なのだ。
これは、ハマンカを含める、少数の町や村でしか作られていない。
…というわけで、俺は町で一袋分フィゼアを買って食べていた。
「ねぇ、ユーロ。私にもちょぉだい。それ」
「ほらよ」
「わーい♪」
サニーは嬉しそうに食べ始めた。
シャリシャリと音がする。
……………
「ね、ユーロ?」
「ん?なんだ」
「よかったの?別れて…」
一瞬の沈黙。そして
「仕方ないさ。確かに楽しかったけど、嫌がってるのがいたし、な」
「でも…」
「ほら、着いたぞ」
サニーの声を遮るように俺は言った。
前にはちょっとした家が建っている。
カランカランカラン
扉の横の鐘を鳴らした。
「はいはい、誰だい」
ガチャリと扉が開いて、懐かしい声がした。
「久しぶり、ロボッツさん」
「お前は…ユーロじゃないか!」
ロボッツさんは嬉しそうに瞳を輝かしている。
たぶん、俺もこんな顔してるんだろう、そう思った。
「入れよ、歓迎するぜ」
「じゃ、お言葉に甘えるよ」
別れと再会。
今日は2つの事が同時に起こった日だった。