条件


条件にもいろいろあるわよね。
できるだけ、自分が有利な条件の方がいいけれど、
そんなものはほとんどないわね。
ま、その条件を飲むかどうかは自分で決めなさい



                         ガチャ…

俺は静かにドアを閉めた。

「おちびちゃんは寝たかい?」

「ああ」

おちびちゃんてのはサニーのことである。

俺達はあのあと軽く話をして、夕食もロボッツが出してくれた。

さらに家にも泊めてくれるとかいうのだから、こんなに嬉しいことはないな。

「なぁ、ユーロ」

「ん?なんだ?」

ロボッツが話し掛けてきた。

「俺になんか用があるんだろ?いってみな」

ま、気付くわな。

「ばれてたみたいだな」

「まぁな」

はは、やっぱかなわねーなぁ…

「ほれいってみ」

「実はな」

俺は途中で一呼吸つく。

「この辺で親父らしき男を見たっていう奴が何人もいるんだ」

「で?」

「あんたに、この辺に親父がいないかどうか探して欲しいんだよ」

「んー…そうだなぁ」

「頼む…」

この町で当てに出来るのはロボッツくらいしかいない。

「報酬も無しでか?」

「そう言うと思ってたよ。こいつが報酬だ」

俺はロボッツに向かって宝石入りの袋を投げた。

「んー…ガメルに直せば500ガメルってところか?」

「ああ…そんなもんだろな」

ロボッツは立ち上がって宝石箱に宝石を入れ、

「ちょっと少ないな」

と、座りながらそう言った。

「…じゃぁ、だめか…?」

どうすればいいんだ…

せっかく手がかりをつかんだのに…

「別にそうは言ってないだろ?やるよ」

「ホントか!?」

「ああ、やるよ。けど一つ条件がある」

「…条件?」

「そう」

ロボッツはグラスにワインをそそぎながら言った。

「つまり、依頼を引き受けてほしいわけだ」

依頼…

そういやここんとこ請けてねぇなぁ…

「どんな依頼だよ?」

「モンスター退治」

即答かよ。

「モンスターって…

どんなモンスターかわかるか?」

「そりゃそうだ。

じゃなきゃ依頼してないって」

それもそうか。

「そのモンスターは、東の森の近くに出没するらしい。

フィゼア園が近くにあるからわかるだろ。

で、肝心のモンスターはどんなかっていうとだ」

「っていうと?」

そこでロボッツはグラスの中のワインを口に運んだ。

「木なんだ」

「…は?」

「だから木なんだって」

……………

「木のどこがモンスターなんだよ」

「いや、ただの木じゃないぜ。そりゃ」

そ、そうだわな。

ただの木なんて別に俺に頼まなくってもいいはずだし…

「じゃ、どんなんだよ」

「ああ…

どんなかっていうと、まず外見は大きなフィゼアの木だ。

動き回ることはない。

次に、攻撃方法だが、木の枝を触手の様に動かして、敵を叩いたり、巻き付いたりする」

「なんだよ、めっちゃやっかいそうじゃねぇか…」

「報酬が足りないんだ。しかたないだろ?」

「ぜってぇ、割に合ってねぇ…」

「気にするな」

気にするって。

何も言わないけどな。

「続きだがな、根を好きな形に変化できるみたいなんだよな」

「マジで?」

「マジで。

明るけりゃわかるみたいだが、暗いと気付かないな、ありゃ。」

しっかしなぁ…

「ま、俺がわかるのはここまでだ」

「ここまではいいけどな…」

「ん?」

「なんでお前そんなに詳しいんだよ?」

おかしい気がすんだがな…

「別に退治して欲しいモンスターの事知ってたっておかしくないだろ?」

「そうかぁ?」

それにしても詳しすぎるような。

「それにお前、そいつを倒さないといけない理由はなんだよ?」

そこでロボッツはグラスのワインを飲み干した。

「お前が帰ってきたら教えるよ」

なんだよ、それ…

「ま、いいか…」

「そうそう、で、うけるよな?」

「ああ、もちろん。

親父の事調べてもらわないといけないしな」

「そっちの方は任せな」

ロボッツはもう一杯グラスにワインをそそいだ。

「まぁ、とにかく商談成立ってことだな」

そして、ワインを飲み干した。