懐かしいもの、美しいもの、嫌なもの。
人によって色々だけど、これだけは皆一緒。
決して後戻りの出来ないもの



「さーて、出発しようか」

宿屋から出た僕たちは、適当に買い物をすませると街の入り口に集まった。

「東のフィゼア園の近くの森でしたよね」

ミスティが確認するように言った。

「話しによるとそーだね」

そう僕がいうと今度はチックルが言う。

「でもって、おいら達の華麗なる力で化け物を倒すんだよね」

「あー、そういうことかな」

「つべこべ言ってないで、とっとと出発するわよ」

セシリアが冷たく言う。

「はいはい」

うんしょっと…

うぅ…結局荷物持ちは僕なんだよね…

ふぅ…

「しゅっぱーつ!」

僕らは東に向かって歩き始めた。



とーちゃく!

なんか早かったなぁ…

結局盗賊や魔物なんかに邪魔されなかったからねぇ。

ここからちょっと離れた場所にフィゼア園が見える。

おいしそーだなぁ…

おっと、仕事が先だね。

仕事が終わったら分けてもらいにいこう。

「じゃ、入ろうか。ディクス」

「そうだね」

僕らは森の中へと入って行った。



「結構…暗いな…」

ファーストが呟く。

松明があるから何とか見えるが、なかったらほとんど真っ暗になってしまうだろう。

はじめはそんなでもなかったんだけどね。

奥へ行くに連れて木や草が増えついには空が見えなくなってしまったのだ。

それなりに歩いたから皆疲れてるみたいだ。

「そーいえば魔物って森のどの辺にいるんですか?」

ミスティがなにげなく言った。

「えーっとね…」

どこの辺にいるっていってたっけ?

うーんと…

…?

…???

…あれ?

「さて?」

こけた。

こけるって言葉を知らないミスティ以外皆こけた。

「あ…あんたね…」

「なこといっても、僕のせいじゃないだろ」

セシリアが立ち上がって僕の方へ詰め寄る。

「あんたのせいよっ」

「なんで!?」

「あらゆる悪いことは全部あんたのせいだからよ!!」

「んなムチャクチャな!」

なんて天上天下唯我独尊な考えかただっ!

「まぁまぁ2人ともケンカすんなよ」

ちっくるがわりこむ。

「そうそうケンカなんかしててもいいことなんてないよ」

とファーストが続く。

…ふぅ。

それもそうだ。

とにかく魔物を探す必要がある。

「むぅ、とにかくどーしようか?」

とりあえず聞いてみた。

すると、全員違わず

『ここで休む!!』

といった。

強い風が吹いた。

揺れる木々の隙間から見える空に太陽を見つけることは出来なかった。


料理とか係…ディクス&ミスティ

その他いろいろ係=ファースト&チックル

応援係…セシリア
これが何かって? セシリアの決めたキャンプの役割表さ。 なんか卑怯臭いが気にしないことにしよう。 「デイクスさん。このスープもうちょっと塩加えたほうがいいでしょうか?」 「ん?どうかな」 保存食は嫌だ!! といったチックルとセシリアのせいで、保存食が無駄になった。 僕だけ。 せっかく買ったのにぃ… チックルとセシリアはもちろん持ってきてなかったし、ファーストやミスティも、 今までもこんな感じだったのか持ってきていなかった。 「んー。こんなもんでいいんじゃないかな?」 僕は味見をして答えた。 「よかった、じゃあこれはそろそろ完成ですね」 「うん、そうだね」 僕以外保存食を持ってない代わりに、僕以外全員食器セットを持っていた。 ミスティとファーストは料理道具まで持っていた。 しかもこうなることを見越してたのか、材料まで買っていた。 「それにしても近くに川があってよかったね」 別になければないでどーにかなったのだが、あったおかげでスープを作る余裕が出来た。 あと木の実を砕いて粉にしたものをパン状にして食べることにした。 パンは今出来てた。 「あともうちょっとしたらできそうですよ。スープ」 「そう?じゃ少し休もうか」 「はい」 僕とミスティはたまたま倒れてた木に腰掛けた。 ふぅっ。 疲れた… 今セシリアはテントの中で寝てる。 チックルとファーストは明日の飯を獲ってくると言ってどこかへ消えた。 魔物にであったらどうするきなんだ? とにかく賑やかな奴等がいなくて静かだった。 ちらりと横にいるミスティを見た。 …なんていうか…エルフって…やっぱ奇麗だなぁ… なんて思ったりする。 焚き火が放つ光のあたり加減がまた彼女の美しさをきわだたせている。 うっわぁぁぁぁっ! 良く考えたらほとんど2人っきりの状態じゃん! 女性と! うわぁぁぁぁぁぁっ! 心臓がバクバク音を鳴らす。 「? どうかしましたか?」 ミスティが、彼女を見ながら頭の中で変なこと考えまくりの僕に気付いた。 「え!?いやっ、べつに!!なんでもないよ」 「変な人ですね。ディクスさんて」 彼女は不思議そうに首をかしげた。 むぅ、僕の考えてたことなんか言えるもんじゃない。 んー、別に(異性として)好きとかそういう感情はないと思うんだけどなぁ。 しょせん僕も男と言うことだね。 「ディクスさん」 「ん?」 少し落ち着いたので、普通に答えた。 「黙ってても暇ですし、お話しでもしません?」 しまった。 こういうシチュエーションは男の僕がきりだすのが王道なのに… 「うん。何について話そうか?」 「そうですねぇ」 んー、と、おとがいに指を当てて彼女はかんがえ始めた。 「そうだ」 「ん?」 「ディクスさんの昔のこと聞いてもいいですか?」 「え?」 「ディクスさんが冒険者を始めようとしたきっかけとか」 昔…か。 僕は少し黙った。 「…あの…もしかして、聞いちゃいけませんでしたか?」 「えっ、いやそんなことないよ」 昔のこと… 「僕は…」 ミスティは仲間だ。 それにもともと話しちゃいけないってもんでもない。 僕は口を開いた。