過去の真相


いまさら、ってやつね。
真実が判っても所詮は過去の事。
だけど…



昔のこと…

「僕は…」

ミスティは仲間だ。

それにもともと話しちゃいけないってもんでもない。

僕は口を開いた。

「僕が…昔貴族だった事は前はなしたっけ?」

「それらしい事は言ってたきもしますが、詳しくは聞いててないと思いますよ」

「そっか」

僕は一息ついて話し始めた。

「まず簡単に言ってしまうとさ。

半年ちょっと前、僕の両親が…死んだんだ…」

…もう、終わった事なのに…

まだ両親が生きてるんじゃないかって心の何所かで信じてる僕がいる…

未練がましいな…

「…」

ミスティは何も言わずにこっちをみている。

「旅先の事故…ってことだったよ。

僕は、その旅行が結婚20週年の旅行って知ってたから付いていってなかった」

あー、なんか、ミスティの顔が後悔の色に染まっちゃってる。

…少し話しづらいな。

「…僕が部屋で本を読んでたら、執事がやってきて、僕にその旨を伝えて、

その次に、父さん達に付いていった、家臣A―――ラグ・ファスタって奴が部屋にはいってきた。

ラグが言うには、父さん達の乗った馬車が、雨で増水した川に落ちて、ラグは助かったけど、

父さん達は…激流に呑まれたんだってさ…」

その後に起きる事件のことを話そうとして、僕は『あの時の怒り』がまた込み上げてくるのを感じた。

「ディクスさん?」

はっとして見ると、ミスティが少しおびえた感じでこちらを見ていた。

「ちょっとだけ…なんか…恐かったです…」

「ごめん…」

「いえ…続けて下さい」

「うん…」

そして僕は続けた。

「…それから数日して、領主からの使いが来たんだ」

「どうしてですか…?」

「僕の父が…まぁ…簡単によって悪事を働いてたんだってさ…」

「ディクスさんのお父様が?」

「そう。

んで、それはお家の富も名誉も取り上げてもいいような事だったんだとさ」

「…」

「驚いたよ。

まさか、父さんがそんなことしてたなんてね。

けど…けど本当は違うってその次の日の夜に知ったよ」

「本当の事?」

「全ての犯人。

それは…ラグだったんだ…」

「ラグ…さんが?どうして?」

「ある男の人が現れてね。僕に言ったんだ。

『河にお前の両親を落としたのは一緒にいたお前んとこの家臣だ。

お前の父が悪事を働いていたってのはあいつの狂言だ』ってね」

「…でも、その男の人が嘘ついてたかもしれないじゃないですか」

「うん、僕も信じなかった。

だけど…ラグにそのことを問いただしてみたら。

すぐに認めたよ。自分が全てやったんだって…

ラグは僕を殺そうとした。

そして僕は…」

僕は自分の魔剣を前に出して、

「この剣を持って逃げたんだ。

それから少しして、僕の家がラグに乗っ取られたと知ったんだ…」

これが…僕の過去の真相…

「そうだったんですか…」

「そう、そして今に至る、と」

それから、僕らの間に沈黙が流れた。

「ねぇ、ディクスさん…」

「ん?なに」

ミスティが指を差した。

その方向を向くと…

「お鍋…吹いてます」

僕らは急いで食事の準備に戻った。