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2001年9・10月号 第2号 P.1

やさかタイムズ編集局  発行責任者/ありま みき
島根県那賀郡弥栄村三里ハ38
TEL 0855−48−2510




 現在、弥栄村の人口は1,846人(平戚13年8月31日現在)。14才以下が11%、65才以上の高齢者が40%弱の典型的少子高齢化社会です。
 しかしながら、弥栄村の人口減少率が他地域に比べ約半分とゆるやかであるとか。また、表 (1−1)をみると、ここ5年間での人口の減少は66人。依然、少子高齢の傾向は進んでおりますが、3年前からそのうちに占める割合の変化はゆるやかになっています。山陰中央新報(平成13年8月22日付17面)によると、1992年からの9年間で124人が弥栄村へU・Tターンしているそうです。
背景としては、村の農林業研修制度や、就農希望者の研修先であるやさか共同農場、低賃金の公営住宅の整備といったハード面に加え、Tターン者を受け入れる地域の開放性があげられています。
 「過疎」という言葉がはじめて使われた、石見地域・弥栄村。今回は、その魅力をやさかの暮らし・食・伝統芸能(神楽)にたず
 さわる「長」にお聞きしました。(2、3頁)

※写真は、大きなさつまいもが出来ました。3年前仙台から、弥栄村にやってきた斎藤千絵子さんと輝樹君(5才)。
4月から森里農家の串崎さんから5aの畑をお借りしています。今畑には、夏の終わりのなす、ピーマン、シシトウ、とうがらし、これからのさつまいも、秋じゃが、小豆、そばがあります。9月にはさつまいもの収穫・焼き芋会を開きました。
〜14才 65才〜 総人口数
平成13年
   8月
209人
(11.3%)
731人
(39.6%)
1,846人
平成10年
   9月
210人
(11.3%)
727人
(39.1%)
1,859人
平成 8年
  9月
234人
(12.2%)
702人
(36.7%)
1,912人
弥栄村人口推移表(1−1)
役場の人口統計をもとに作成
 

弥坂村村長
田野島正徳さん
ー集落の役割
 「Uターン、Tターン者にとって、集落でのつきあいが村のつきあいの窓口になる。新しい人たちは集落の活性化にもなる。これからは、研修生が集落に入り地元の人たちと生活する中で、血縁関係がなくても後継者として農業経営を譲っていく試み等も考えられる。研修生が経営の基盤を得られるだけではなく、そうすることで村内の田畑を守っていくことができる。また集落は、職種に係わらず、これまで身につけてきたノウハウを地域に活かしていこうとする人たちの多様な人生の受け皿にもなるだろう。」

ーこれからの弥栄の課題は?

 「都市の人たちの受け入れも、市町村合併の問題についても、暮らしに自信を持ち、自分はここでどういう気持ちで暮らし、何を喜びとするか、ということが重要だ。弥栄に住み、山を守り、田畑を耕すことを大切にしながら、都市の人たちと支えあっていきたい。」 「日本人は米、米を食べるべきだなあ。」

(*)コンベンションヴィレッジ計画
 1986年からはじまった村の活性化プロジェクト。農業生産に基盤を置き、低農薬・有機栽培といった本物志向の食文化を育み、発信していく。都市部の人達が何を求めているか情報を集めるためにも、自然の多い弥栄村を都市の人達とのコミュニケーションの場とし、白然とふれあい、様々な体験ができる環境づくりを進める。
 昨年9月に就任された田野島村長に農村と都市、集落の役割など、人と人のつながりを中心にお話しをうかがいました。

ー都市の方々へ

 「弥栄村では15年前から、コンベンションヴィレッジ計画(*)に取り組んでいる。都市の人たちに、山村は守る・農村は守るということを含めた情報の発信や産栄・農芸の体験を通して、弥栄村を理解してもらう。また、地域農産業では、地元の特性を活かした安心でおいしい食へものづくりをすすめている。都市の人たちとの交流の根底には、弥栄に生きることに対する愛着心や、山を守り、田畑を耕すことを大切にして暮らす姿勢がある。」 「都市・都会が、村から出ていった多くの人達の力によってつくられてきたことを忘れないでほしい。農村の価値は、経済の効率だけでは判断できない。環境の時代の21世紀に、農山漁村をつぶしてはいけない。農村は、自然・食料を守り、育むことができる。」

ー∪ターン・−ターン者、農林研修生の受け入れについて

 「これからも住宅整備や研修制度など、積極的にすすめる。だが、受け入れることが目的ではない。弥栄の住人になることで村全体の生活や暮らす人たちの心が豊かになることをめざしていきたい。」

振興公社理事長
   山口忠さん
今、弥栄で誇れるものは3つしかない。米と自然著と水。米も農薬を使って、反に12俵にも穫るようだと、おいしいのは初めの3ヶ月くらい。おいしい米をつくるには、10年かけて土づくりからはじめる。農協に売ることを考えて、軟弱なコシヒカリだけを作るのではなく、弥栄の地に合ったうまい米を作っていきたい。自分の店で使う米は、毎年村内の田を見て回り、土をなめてみる。何ともいえない、甘くて、まろやかな土の米がいい。」

ーこれからの弥栄の食・食材は?
 「今、やさかの食文化で伝えたいものは田舎のお煮しめ。季節の野菜の他に、干し大根など保存用に加工した食材を使う。ただ、今は受け継がれてきた料理を伝える場所がない。食堂も継承していく場所の一つだが、そこでも後継者を育てなくてはならない。
 食材ということでいえば、地元の人大豆を使った豆腐がある。今、ビゴル門田などの集落が転作で大豆を作っているが、句の野菜を作るなど、もっと作目を増やしていけば弥栄の料理も広がるだろう。」

ーこの秋のおすすめメニューは?
 「おもしろいのは 『カボチャの山菜ごはん』(ミニカボチャに、キジ肉や山きのこ等、時の具材の山菜御飯を入れて蒸す)。うまいのは『くり茶がゆ』(山のしば粟の皮をむいて2・3日干して・・・)。味里では2千円、3千円でコース料理をするが、その中に一つ印象に残る弥栄の料理をつくる。味覚はそれぞれだから、まあ、食べてみんさい。」
 山口忠さんは、(財)ふるさと弥栄振興公社の理事長であると同時に、ふるさと体験村内郷土料理店「味里」や旅館「観月」を経営している。弥栄の食についてお話しをうかがった。

ー料理に携わるようになったきっかけは?
 「やっぱり、.食べることが好きなんだなぁ。子どもの時から親が百姓するのを見て、おいしい米を食べてきた。今、80代の人達の食文化を再現しようと思っても、もう、当時の食材がない。春の山菜といってもすぐ手元にあるのは、うど、わらび、よもぎ、ぜんまい、こごみ、ふきくらいになってしまった。道路の舗装、農薬、出んぼの基盤整備でこれまで食べていた野草ははとんど消滅。きのこは伐採や天候の不順、ダムの建設、水の汚れ、農薬などですっかり減ってしまった。
 

安城神楽社中団長
小松原茂さん

140年程前からの歴史があるという安城神楽社中(現在は17名で構成)の団長を務めている小松原茂さんに神楽の魅力を中心にお話しをうかがった。

ー神楽と女性
 「安城神楽社中は大元神楽が元祖になる。神楽にはもともと神事の奉納という役割があった。勤めるのは神職、伶人であり、当然ながら女人禁制。女性はたずさわれなかった。しかし戦後に、神道とは切り離され伝統芸能として復活してからは、歴史の長い社中にも少しずつ女性が入ってきている。今、安城社中にも農業研修生の女性がきているが、女性であるというよりも、村外から来て神楽に興味を持っているということで、社中のメンバーにも刺激になっている。

ー神楽の魅力は?
 「現在は村内各集落での秋祭りの他に、村外に出向いていく機会が多くある。村主催のイベントにもたいてい組まれており、人を集めようと思えば神楽を、という傾句さえもある。神楽は、同じことを何年も何年も繰り返しているのだが、理屈ではなく惹かれてしまう魅力があるのだろう。様々な状況の中でやめていくメンバーもいるが、必ず入って来る者がいる。
 私自身40年前から社中に入れていただいて、まだまだ未熟だが、若い人たちには、私らが習ってきた型をきちんと伝えていきたい。むしろ、もとに戻していかなくてはならない。最近は時間制限を設けた競演大会などが増えてきているが、若い人たちがそういうものだと誤解してしまう危険がある。省略型ではなく、あくまでも本来の姿を大切にして伝えていきたい。」

ー都市と弥栄の神楽の架け橋
 「弥栄村からはなれた人たちには神楽を通して弥栄のよさを思い出し、ふるさとをかみしめて欲しいと思う。保育園などでも神楽を教えているが、それも「ふるさと弥栄」を子どもの頃から身につけて欲しいという思いがあるからだ。
 社中は神楽の好きな者、大切にしたい者の集まりで、儲け主義ではない。実費さえいただければどこにでも喜んでいきたい。
 村外での神楽は、興業ではなく、都市と農村の架け橋だと思う。神楽を通して、弥栄とのつきあいを広げていけるのではないだろうか。」


 

 今、弥栄村に暮らすのは、1,848人。それぞれが想いを抱いて生活しています。
 今回は、暮らし・食・伝統芸能にスポットを当ててインタビューをさせていただきました。3名の方に共通する、やさかに暮らすことへのこだわりや、地域に完結するのではなく村外とのつながりを築こうという姿勢は、決して「長」だけのものではないと思います。
 これからのやさかの魅力は、古くからの暮らしと、村内外の新鮮な感覚のバランスです。それを伝えられるのはやはり、ここに暮らす住民ひとりひとりなのでしょう。

ビゴル門田代表理事
広瀬康友さん
オーナー制は、昨年(平成11年)から、ビゴル門田のPRを兼ね、交流目的ではじまりました。
 オーナーは、収穫を含めて3回(5月の「種まき」、6月の「草取り・肥料蒔き」、8月の「収穫」)、畑に来て作業をします。作業の後は、集落の方や参加者同士のつながりを深めるため交流会も行っています。5m程の畝が、ひと口(5,000円)で、およそ5kg分の枝豆が収穫できる見込みです。収穫後は塩茹でして冷袷凍保管してありますので、必要な時に必要な量を送る(送料は各自負但)こともできます。特に広報活動はしていませんが、集落の人たちの呼びかけで、昨年は30口、今年は60口ものオーナーが集まりました。
 代表理事の広瀬康友さん(58才)は、「もともと門田はまとまりのある集落だったので、みんなで法人をつくることができた。枝豆のオーナー制も評判をいただいており、今後はオーナーを通して門田産の米や、大豆、加工品等を紹介していきたいと思う。」と話しています。
 今年から研修生の受け入れもはじめ、加工場も建設されました。ビゴル門田は、これからも集落の取り組みの輪を広げていきます。 枝豆オーナーに関するお問い合わせは、「ビゴル門田」またはやさかタイムズ編集局まで。今から来年のお申し込みがあるそうですが、「多くても100口まで」かな…ということですのでお早めに。
         
(持農)ビゴル門田は、弥栄村門田集落の25戸全員が組合員となり、21hの田んぼを管理・経営しています。平成11年に特定農業法人(土地(借地)を保有し、農業生産等の活動を行う)として認められました。集落人口の減少、高齢化が進み、個人で田畑の管理を行うことが難しくなったため、集落の法人経営へと転換しました。主な活動は・・・
1、水稲、大豆、枝豆等の有機栽培及び低農薬栽培
2、枝豆、菓子、漬け物等の加工
3、大豆オペレーター(村内転作地での有機大豆栽培の機械作業をやさか共同農場と請け負う)
4、研修生受け入れ
5、枝豆オーナー制

*枝豆オーナー制*
 8月5目にビゴル門田で枝豆の収穫祭が行われました。当日は110人が参加し、門田米のおにぎりやバーベキュー、生ビールと一緒に、取れたての枝豆を味わいました。有機栽培枝豆の品種はちょっとこだわった「茶豆」。通常の枝豆に比べ、粒が大きく、甘みがあり、風味が良いのが特徴です。
                

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