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◆有機JASの経緯と方向
こうした状況の中で、農林水産省は今年度から有機食品の検査認証制度(改正JAS法)を施行しました。この制度で認定された生産者の有機農産物のみが、「有機JASマーク」や「有機」の表示をすることができます。国の動きの具体的な背景には、次の2点があります。まず1つは、有機農産物の国際基準ができたことで、海外から大量に有機農産物が輸入される可能性があること。2つめは、「有機」の表示が基準のないまま出回り、消費者が国産商品に対して不信感を持っているという状況です。つまり、国として基準をつくることで、消費者の国産農産物への信用を高め、国内の農林業を守ろうとしています。
有機農産物が一般の市場に並ぶことで、より多くの人が有機農産物を気軽に購入し、毎日の生活の中に取り入れることができます。しかしその一方で、これまでの有機農業の活動が色あせてしまうことや、生産者間で、価格等の競争が生まれることも考えられます。
■生産者間のつながりのもつ可能性
認証を受けるには、作付けや圃場などの資料や商品の生産から出荷までの一連の流れ(システム)を示すことが必要です。この申請の準備や継続に伴う物心両面の負担の軽減策のひとつには、有機農業を地域やグループで取り組んでいく方法があります。複数の生産者の組織には、集団としての基準やシステムがはっきりとした形で必要ですし、お互いを支え補い合うこともできます。また、地域間の横のつながりや生産者間の交流・情報交換によって、無駄な価格競争を行わないだけでなく、より広い地域で人手を活かしながら作物の適地適作ができるなど、新たな展開を生み出すことができるのではないでしょうか。
弥栄村で有機農業に取り組む(農事)森の里工房生産組合もまた、今後の有機農業の可能性を多分にもった生産者組織の一つです。 |
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◆(農業)森の里工房生産組合
(農事)森の里工房生産組合は(通称・森里)、平成9年に13軒の野菜農家で設立しました。(前身は有機野菜栽培勉強会 「あおむしの会」) 村内及び近郊の有機農家の生産組合です。現在は37名の組合員で野菜部会・米部会を組織しています。平成12年12月には、有機JASの生産工程管理者として認証されました。農家同士の情報交換や堆肥等資材の共同購入、作付けの割り振りなども行いながら、地域の有機農業の先導力となっています。
昨年、森里に村内集落営農組織のひとつである (特農) ビゴル門田生産組合が加わりました。森里で扱う農産物の穀類(豆・麦・そば等) の幅も広がり、村内の有機農業国場面積もぐつと増えました。
もう一つの森里の活動に研修等受け入れ事業があります。農家の減少や高齢化を受けて、新規就農者や新たな地域の担い手を育むため、農業体験や指導、農地の借用なども積極的に行っています。 |
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◆串崎文平さん
串崎さんは昔ながらにタバコ、稲、和牛肥育などの複合農業に、ご夫婦で取り組む農家。現在は、(農事)森の里工房生産組合の理事長を務めている。森里には主にネギを出荷している。
■有機農業の取り組みは?
「耕転機がなかった頃は弥栄でも1軒ごとに牛がいて、あぜの草も里山の草も刈り、牛の敷物にするなどすべて家畜を通して田畑に出していた。もともとできる限り農薬を使わないで栽培してきたが、森里として有機に取り組んで4年目になる。私の場合は自分だけがおいしい物を食べて他の人の分は何でもいいというのは人道的に良くないと思ったのが一番の気持ち。」
■有機」JASの取得については?
「今回は生産者として社会的な要請に応える形での取得だと思う。認定を取得するための資料作成には日々の栽培の記録が必要だが、流通に対してものを言うには必要なこと。記録がなければ全てが曖昧になってしまう。特に若い人たちはパソコンでもなんでも使えるのだから、認定のためだけではなく日々の積み重ねの記録が必要。」
■これから有機栽培に取り組む人ヘアドバイスを
「経営として有機栽培も一つの柱だが、これをどう食べる方向に持っていくかは各自の努力の問題。有機では、慣行に比べ形は悪いし草にもやられるし、収量も売り上げも7割になる。足を知るー後はそれに向かって無駄のない作り方をする。「有機」「有機」というが必ずしも「はじめに有機あり」でなくてもよい。まずは低農薬からはじめても良いと思う。生活もあるし、自分が苦労しただけの見返りがないと続かない。」
■消費者の方々へ
「食べてもらうわけだが、つくる側ばかりが頑張ってもしょうがない。野菜に虫食い後があってもある程度は理解して欲しい。そのためにも、現場に来て見て欲しい。作業の苦労を知って 欲しい。お互いに話をしながら、納得しながら、ものを見ながら問題点を改めていくことが必要だと思う。生産者と消費者が別々の部屋にいてはどうにもならない。」「今は暇があったら草ばっかり取る毎日だよ」と文平さんとおばちゃんは笑う。今年は、NPO法人ふるさと弥栄ネットワークの農芸学校部門に畑を提供している。
◆小松原美智子さん
森里の野菜部会会員。道路からちょっと奥へあがった所に小松原さん宅がある。みつば、たけのこなどの山菜に囲まれた中でハウスと露地で有機野菜をつくつている。
■野菜づくり歴は?
「孫たちが弥栄に帰って来たのがきっかけで、仕事をやめて畑をやりはじめた。無農薬ではじめて、今年で13年目くらいになるかな。そのころ、都市部の高収入者で病気になる人が多かった気がする。本を読んでも、農薬や化学肥料が体に蓄積していくのが怖いなと思った。はじめ虫グスリから使うのをやめた。それから農薬もやめて土づくりをずっとしてきている。」
■有機農業への取り組みは?
「はじめたときは有機なんて知らなかった。「勇気」かと思った。とにかく草は生えるし、虫はつくし。今思えば、柿の木や梅の木はもうずっと消毒していないが、消毒すればするほど木も弱くなって虫も病気もつく気がする。
土づくりには、草やら野菜くずやら米ぬかを撹拝し寝かせた肥を使ってきた。これが一番ここの畑に合う気がする。玉ねぎは、今年やっといいのができた。土づくりにはやっばり10年はかかると思う。有機で野菜をつくるには何よりも土が大切だと思うよ。」
■森里について
「畑は、家の食生活を支えるためにはじめた。森里に入れてもらって、今はそれ以外にもつくる。大変は大変だけど、作目も増えたし、前よりも張り合いがある。味も見栄えもいい物をつくろうと思う。
野菜づくりは話を聞くより見るのが一番。森里には野菜づくりのベテランの方が沢山いる。見せてもらったり、アドバイスしてもらったりする。肥料のことも教えてもらったりするしね。」
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■消費者の方へ
「やっぱり、有機野菜を買う心がけのある人に食べてもらいたい。おいしい物を食べるのは、おいしい空気を吸うのと同じ。自分のためになる食べ物だよって思う。前は都会の人にお中元を買ってあげていたけれど、今は野菜を送る。捨てる物だからではなく、元気になるから食べてと自信をもってあげられる。
森里での消費者の方との交流は新鮮。日本が科学のために頑張る時代ではなく、田舎に帰る時代なのかもしれない。今度は是非、夏に見に来てもらって、草を取るのを手伝ってもらえたら…。」
◆三浦政文さん
三浦さんは、森の里工房の米部会会員。水稲の有機栽培には昔からの米ぬか除草や昨年度からはじめた紙マルチ栽培にも積極的に取り組まれている。
■三浦さんの米づくり歴は?「本気でやりはじめて40年くらいになる。本や新聞を読んだりするが、生まれたときから家が百姓だから親父が基礎になっている。おいしい米をつくろうと思う。ただ、百姓をはじめたのがちょうど増産増産で金をかけずにいかにして収量を取るかという時だった。その時のことが頭にあるのでおいしいだけではなくて、収量も取りたいというのがいまだに抜けない。」
■水稲の有機での取り組みは?
「有機というのは、自分が子供の頃にみた農業に戻ってきている。昔は牛と鎌だけで米づくりをしてきた。今も手入れはしっかりやらないといけない。特に野坂はきちんとしている。仕事がきれいだと自然と集落が仲良くなるし、自分が作業場に行って気持ちがいい。有機ならよけいにきれいにしなくてはいけない。田んぼのあぜも少なくても2・3回は刈らないとね。もともと野坂(三浦さんの集落の地名)は土地に恵まれている。水は出るし、所が高いから風通しが良い。土も粘土質で地力もある。おいしい米ということでも野坂は自信があるが、やっぱり土のお陰。土地にはなんぼ逆立ちしてもどうにもならない。」
■有機JAS認定取得のための資料作成については?
「栽培の記録は全部している。稲の倒伏などはカメラに収めているし、日記にも付ける。昨年・一昨年と比較もできる。記録がなかったら毎年1年生になる。」
■消貴著の方々へ
「つくるもんだけが本気になっても仕方がない。食べる側にも理解して欲しい。何を食べてもわからない人には食べて欲しくない。自分としてはうまいもの、いい加減でないものを出していく。おいしければ、毎年欲しいと言うし、またその友だちや親戚に広がっていく。消費者に農業者も呼びかけなければならないし、国としても対策をとらないといけない。」
■森里について
「いいものができてもわずかな量ではだめ、いいものがある程度まとまる必要がある。森里でも、有機だからと高く購入してもらうだけではなく、お互いがレベルをあげていかなくてはいけない。カメムシの防除などは一斉にやらないと、個人でやっても意味がない。 ある程度の価格で米を売ることができればいいが、農業は金ばっかりではいかないところがある。自分が手をかけて良くなることに喜びがある。金儲けだけではだれもやらなくなると思うよ。」
◆『森里にとって有機JASの役割とは?』
インタビューを通して
有機農業では、土づくりや草取りなど日々の管理作業が大変だと農家の方々は口をそろえます。それをカバーするのは経験や勘だけではなく、日々の作業の記録。三浦さんも「記録がなければ毎年毎年1年生」と言われています。
日々の記録は、必ずしも栽培に役立つだけではなく、串崎さんが言われるように、生産者が発言するためにも必要になります。有機JAS認証制度にも、申請時に作付け・圃場カルテなどの資料作成が必要です。作目が多く圃場が点在する森里農家では、その資料は膨大で、作成も大仕事です。しかしながら資料を作成し、認証を受けることは、生産者から流通に対して主張をする一つの手段なのです。その主張は、商品の「有機JASマーク」の表示となって、消費者へ届けられています。
生産者である農家は消費者に買っていただくという弱い立場になりがちです。しかし、流通における改善はお互いの積極的な姿勢で進めてゆくべきなのでしょう。 |
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まず手始めの仕事が森の里工房で栽培されている米、野菜、大豆などの有機JAS取得に向けた栽培暦や圃場台帳等の資料作成のお手伝いでした。森の里工房では、有機農業を化学肥料や化学合成農薬が無かった頃の農業の復活として捉えている農家がほとんどのため、唯一の農作業日記を資料に転記する作業には、どうしてもアシストが不可欠でした。今年の6月始めにやっと森の里の野菜農家全員の有機JASが取得できた時、有機部会の初仕事が一つ成果を作ることができたわけです。
有機JASの取得に続いて、今度はもう少し大きな課題に取り組むことになりました。それは村の中にある9つの集落営農組織を地域で取り組む有機農業の核として育てていくことです。もともと集落営農組織は、20〜30戸の農家が30ヘクタールぐらいの水稲を中心にした農地で機械を共同利用する組合として発足したものです。ですから内発的な有機農業への関心はほとんどないため、まず経済的メリットとして共同農場が中心になって大豆の集団転作を有機栽培の作業体型で取り組むことから始めました。このとき集落営農に参加した各農家は、転作奨励金として10アール4万円が支払われたのでした。
有機部会は、この集落営農組織の中でも特に農地の共同運営まで手がけている、農事組合法人ビゴル門田の活動を支援しています。実際に集落全体の農地の中で、有機栽培に適した圃場を確定し、次に作付けする品目を集落全員で決めていく訳です。有機部会が大切にしている事は、有機JASの取得だけに留まらないで、慣行栽培や減農薬栽培の生産者も含めた地域的な農業の展望を作っていくことです。
(佐藤 隆) |
ここ4・5年弥栄村で有機農業に取り組んでいる経営体がやさか共同農場と森の里工房生産組合です。この二つの組織の関係は、共同農場が自営の農業部門を持ちながらも森の里工房から農産物を集荷して加工や販売を行っている事から総合的農業体と言えます。また構成員の出身地という視点では都会から来た若者集団と地元のお年寄りたちの互助組織のような機能も果たしています。昨年の秋頃だったですが、森の里工房の理事会の中で「有機JASを取りに行こうか。それで村に有機農業が広がっていくのか。」たぶんこんな話題で少し議論し、その中から有機農業の広がりをつくる運動体の立ち上げが提案され、当時設立準備段階にあったNPO法人のなかに有機部会が作られたわけです。
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*有機農産物*
米(白米・胚芽米・玄米)
大豆
麦
野菜
(ほうれん華・小松菜・ネギ・トウモロコシ
トマトなど100品目)
〈認定機関〉
特定非営利活動法人有機認証協会
く生産工程管理者〉
(農事)森の里工房生産組合 |
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*有機農産加工食品*
[豆腐]
やさか木綿豆腐
やさか縞豆腐
やさかおぼろ豆腐
やさか厚揚げ
ミニパック豆腐
(胡麻味・ゆず味・黒大豆味)
豆乳
おから |
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[味噌]
有機合わせ味噌
有機黒大豆味噌
有機麦味噌
有機やさか味噌(甘口・中辛□)
有機吟醸
く認定機関〉
特定非営利活動法人有機認証協会
く製造業者〉
(有)やさか共同農場 |
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